リンパ浮腫の出来かた
 リンパ浮腫、特に二次性リンパ浮腫は、乳癌、子宮癌、前立腺癌などの手術後に、手術によりリンパ節が切除、または破壊されたために起こるります。したがって、二次性リンパ浮腫では、そけい部(脚の付け根)または腋の下のリンパ節を切除してあり、この部分のリンパ液の流れが悪いことが根本的な原因となっています。
図1
図1

 まず、図1を見て下さい。通常、脚または腕の血液の流れは図のようになっています。つまり、動脈からきれいな血液が流れてきて毛細血管に至り、ここで血液成分の一部の水分と蛋白成分(で代表される物質)は毛細血管の外に出て、組織中の細胞に取り込まれます。組織で使われた水分はそのまま静脈に戻りますが、蛋白成分は静脈に戻ることができず、リンパ管に入りリンパ流となり、各々の経路を得て静脈へ還流します。このリンパ管内の液をリンパ液といい、淡白や脂肪を多く含んでいますが、赤血球は含まず、無色~淡いクリーム色をしています。

 例えてみれば、この動きは、給水管(動脈)から送られてきた水分と蛋白が、使われたのち、それぞれが静脈とリンパ管という2系統の排水管によって排除されているわけです。そして、リンパ管という排水管が何らかの原因で詰ってしまったのがリンパ浮腫です。
 排水管が詰ってしまったため、リンパ管に入れなかった蛋白は血管外の皮下組織(組織間隙 -そしきかんげき- と言います)によどんでしまうことになり、組織間隙中の蛋白濃度は徐々に高くなってきます。

しかし、組織間隙に蛋白が多くなっただけでは、脚や腕はむくんではきません。
なぜ、むくんでくるかというと、蛋白が水分をひきつける性質をもっているからで、これを膠質浸透圧-こうしつしんとうあつ-(膠浸圧) と言います。
図2
図3
 膠質浸透圧(図2)とは「半透膜(1)(水は通すが物質は通さない膜)を隔てて濃い液(2)と薄い液(3)があった時、濃い液の方に水分が引っ張られて同じ濃さになろうとする力」と考えて頂ければよいでしょう。

 これは人間の体の中では図3のようになります。
 つまり、毛細血管壁という半透膜を隔てて血中の蛋白濃度は高く、皮下組織間隙の蛋白濃度は低く、そのため通常水分は血管内に引きつけられ、とどまるように働いています。
 しかし、リンパ浮腫のようにリンパ管の障害がありますと、組織間隙中の蛋白濃度は増加することになり、血管内に水分を引きつける力はその分だけ弱くなってしまいます。
 また組織間隙中の増加した蛋白はある一定量の水分を引きつけるため、その分、組織間隙中の水分も増えることになります。
 話を戻します。リンパ浮腫では一次性(生まれつきのもの)と二次性(乳癌や子宮癌などの手術後に起こるもの)とがあります。一次性は図1のリンパ管、リンパ節ともに発育が悪いことが多く、二次性ではリンパ節が切除または破壊されてしまうために起こります。
 では、リンパ浮腫のようにリンパ管やリンパ節が障害されてしまった場合、組織間隙に溜まった蛋白と水分はそこから全く排除されないのでしょうか?人間の体は巧くできていて、そのようなことはありません。一部のリンパ管が障害されてもなんとか蛋白を心臓へ戻そうとして、一生懸命、働くようにできています。

図4
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図4を見て下さい。今、幹線道路の先の方で交通事故が発生したとします。
すると、後続の車はその事故をさけて、(1)のように細々とでも進んだり、(2)、(3)のようにいつもは通らない脇道へはいったりし、そのうち脇道も太く立派になってきます。リンパ管も同じように考えられます。

図5を見て下さい。たとえリンパ節が切除されてもリンパ液は細々とでも流れ続け、副行路(脇道)がどんどん発達することになります。このようにリンパ浮腫でリンパ管障害があるとしても決してリンパ液は流れないわけではありせん。 むしろ、人間の体は何とかしてリンパ液を流そうとがんばっている わけです。

この副行路は主に皮膚表面近くに多数存在しますので、軽くさするだけでもリンパ液の流れは良くなります。逆に、下着のゴムなどでくびれができるとリンパ流は簡単に阻害されることにもなります。
従って、リンパの流れを邪魔しないためには、基本的に以下の注意が必要です。
・くびれができるような下着は着用しない。
・皮膚を軽くへこませるような衣類も避けた方がよい。
(理想的には、全て圧迫のないダボダボの衣類がよいことになります)
例:コルセットやガードルなど、ゴムのきつい下着は好ましくない。
  軽くくびれができるだけでも、その分だけリンパ流派阻害される。

 なお、リンパ浮腫を治療しないで放置しておくと、象皮病になることもあります。
 つまり、組織間隙内の蛋白が増加し、変性して線維網を形成し皮膚にまで及びます。この状態はある程度までは際限なく続き、脚または腕は極端に太くなり変形します。皮膚の表面も固くなり、象の皮膚に似ているので象皮病といわれます。

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