蜂窩織炎では動脈側からむくみが漏出されてくる

 「蛇口を閉める」ことは、蜂窩織炎の時に赤く熱を持った部分を冷やすことになります。
一般的に「蜂窩織炎になったら浮腫は悪くなる」と言われています。
 図は、静脈側からの排水よりも動脈側からの漏出量が多いことを意味しています。しかも圧倒的に多いので少しぐらい静脈やリンパ管からの排水、つまりリンパ浮腫の治療を強力にしても追いつきません。蜂窩織炎が起きた時に浮腫が悪化しないようにするには、以下の3点が必要となります。

(1)静脈側からの排水(リンパ浮腫の治療)を強力に行う
(2)動脈側からの漏出を強力に押さえる
(3)その原因である細菌を除去する
 蜂窩織炎の治療で最も必要なことは「むくみを極力排除すること」です。これが最優先で、極端に言えば、むくみさえ排除できれば抗生剤など使用しなくても蜂窩織炎を治すことができます。

 一般的に複合的理学療法として患肢の挙上、マッサージ、薬物の服用、弾性スリーブ・ストッキングの着用などを行います。この中で、マッサージは炎症がある時には刺激になりますのでしてはいけません。また、弾性スリーブ・ストッキングの着用は圧迫し維持すること以外にマッサージ効果もありますので一般的には蜂窩織炎の際は着用してはいけないことになっています。ですが逆に言うと、マッサージ効果さえなければ着用しても良い事になります。ですので、炎症が悪化しないように注意して弾力スリーブ・ストッキングまたは弾力包帯を用います。それほどまでしてもむくみを減らしたいのです。
 では具体的にどれくらいの炎症なら弾性スリーブ・ストッキングまたは弾力包帯などを使用しても良いでしょうか。かなり判断は難しいのですが、「弾性スリーブ・ストッキングや弾力包帯を使用することで炎症が悪化さえなかったら使用は可能」と考えられます。熱が出たばかりで炎症を起こしている個所が真っ赤で、なおかつパンパンに張った感じがある場合は使用できない期間ですが、少々赤くても圧迫した方が結果的にむくみが減るようなら使用した方が良いようです。とにかくむくみを減らす事です。

 むくみを減らすのが大切であるというのは、おそらく血流と細菌の培養地としてのむくみの問題だろうと思います。いずれの場合も同じですが、病気の治癒には血流の良い事が基本的な条件となります。蜂窩織炎の場合も同様で、皮下組織間隙中にむくみがたくさん存在していると、炎症のある部位と血管とが遠く離れている状態になり、炎症のある部位に血流が届きません。そのため人間の治癒能力が発揮されません。また、抗生剤は血流に乗って炎症の現場に届きますから、どんなにたくさん飲んでも炎症に届かなければ効くはずがありません。また、むくみの液は細菌にとって絶好の培養地となります。

 動脈側からの漏出を抑えるためには炎症部分を冷やします。ただし、あくまで赤くなった場所のみを冷やします。これはよく間違えられてしまいますが、赤い所は血管が拡張して水分などの漏出が増えていますから、それを抑える目的で冷やします。ところが炎症周囲の赤くないところまで冷やしますと、その部分の血管は収縮してしまうため血流が悪くなり、結果的に上に述べた「炎症のある現場への血流を良くする」ことに反します。従って、赤い部分以外を冷やしすぎるとむしろ治りにくくなります。実際にはなかなか難しいことですが、大切なことです。

 さらにむくみを減らすために利尿剤も有効に使えます。利尿剤だけ使っても良くなりませんが、むくみを減らした後に弾力包帯などでしっかりその状態を維持すれば効果を得ることができます。

 このように考えて治療すると、抗生剤なしでも十分治るケースも多くあります。さらに駄目を押すように抗生剤を服用します。一気に徹底的に治療しないとリンパ浮腫における蜂窩織炎はコントロールできません。

 急性期数日間は赤い部分を冷やし上げて寝ています。その後はいつまでも寝ているわけにいきませんのでカッカした感じが取れてきたら日常生活に戻りますが、その際は弾性着衣を装着します。難しい事ですが赤くて熱を持っている患部は冷やすように心がけます。それでも炎症が再び悪化してくるようでしたら、再度冷やして上げて寝るようにします。一旦蜂窩織炎になりますと経過は非常に長く、数か月から年単位となりますが、長期戦のつもりで患部を冷やし気味として弾性着衣を着用して徐々に患肢周径を細くしていき維持します。細くなれば炎症も改善していると考えて良いと思われます。
 
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