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日本におけるリンパ浮腫診療の現状について


● 日本におけるリンパ浮腫診療の指針は制度的な問題に関しては①厚労省委託事業リンパ浮腫研修委員会、および臨床における治療の標準化に関してはがんセンターのクリニカルパス、の2つが比較的公的に近い組織です。この2者には各医療機関からの代表が集まっており、多くの方々のコンセンサスにより成り立っております。そのほかにはリンパ学会など各学会関連の活動はありますが、それ以外はいずれも私的な組織、名称であり、公的なものではありません。
「独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター」  *私のこのHPも公的なものではありません。

 リンパ浮腫を行える資格に関しては、2016年4月の診療報酬改定において、厚労省後援「新リンパ浮腫研修」に準ずる座学受講後、認定された施設において実技を習得した場合に与えられるようになりました。(詳細は下記参照)


治療に関しては、がんセンターのクリニカルパスが基本と考えて下さい。
 ネットや各種書籍を見るとつい積極的な治療を考えがちですが、リンパ浮腫の治療、特に予防や初期治療は日常生活における注意がもっとも重要であり、見て分かるほどにむくんだ場合には弾性ストッキング・スリーブが重要となります。
 すくなくとも、術後まだむくみが出ていない段階やほんのわずかむくんだ段階で、リンパドレナージ(マッサージ)をしないといけない、とか弾性包帯を巻かなければいけない、などということは多くの場合まずありません。特に術後間もない時にリンパドレナージに頻回に通ったり、弾性包帯をしないとむくむ、という強迫観念はけして持たないようご注意下さい。初期に日常生活上の注意を行えば、それ以上の進行は十分に抑えられます。また、初期の段階でリンパ管静脈吻合術LVAを進められる場合もあるようですが、診療ガイドラインでは保存的治療が優先します。

複合的理学療法という言葉がよく出てきますが、これはあきらかにむくんだ場合の治療法と考えた方が良いかと思います。これは①リンパドレナージ②圧迫③圧迫下の運動④スキンケアとして知られています。しかしながらここには、もっとも基本となる患肢の挙上や日常生活の注意が含まれていません(国際リンパ学会の原典では記載はされており、治療に含まれていないわけではありません)。そのため、「リンパ浮腫の治療=複合的理学療法」の図式が広がり、日常生活の注意がおろそかになりがちになる風潮が出てきたため、リンパ浮腫研修委員会では下記の合意事項にあるように、日常生活の注意を含めた治療を「複合的理学療法を中心とする保存的治療(複合的治療)」とよぶこととし、そのような風潮に注意を促しました。
 したがって、複合的理学療法と複合的治療とは別の考え方を指していますが、一部で複合的理学療法を複合的治療と混同して使用されており、大手出版社からの書物にもみられていますので、十分にご注意下さい。
       複合的理学療法: ①リンパドレナージ ②圧迫 ③圧迫下の運動 ④スキンケア
       複合的治療   : 複合的理学療法 + 挙上などの日常生活上の注意
 なお、「複合的理学療法」は英語の complex physical therapy の訳ですが、「複合的治療」は元々は日本の官報の記載から来ているため、適切な英訳はありません。          

平成21年度厚生労働省委託事業リンパ浮腫研修委員会における合意事項

リンパ浮腫治療においては各施設でいろいろな方式がとられていることと思いますが、予防・治療における重要な事柄および用語の統一について各委員の間で下記のような合意が得られました。 (2010.1)

1)リンパ浮腫の予防におけるリンパドレナージ、弾性ストッキング・スリーブの扱い:
現在のところ「リンパドレナージと弾性ストッキング・スリーブなどの圧迫療法が予防に有用」というエビデンスはない。
乳がんや子宮がんなど婦人科がんの手術後にリンパ浮腫の予防に必要だからという理由で、リンパドレナージや弾性ストッキング・スリーブをすべての患者さんに指導し、施行を義務付けている施設がある。しかし、強制されている患者さんには大きな苦痛となるためこれはおこなうべきではない。 

2)リンパ浮腫治療における日常生活指導の重要性:
従来、リンパ浮腫治療においては「複合的理学療法」が有用とされてきたが、これのみでは不十分であり、長時間の立ち仕事を避ける、時に患肢を挙上するなどの日常生活指導を加えることが重要である。したがって、「複合的理学療法」に日常生活指導を加えた「複合的治療」(または「複合的理学療法を中心とする保存的療法」)がリンパ浮腫に対する標準的治療である。 

3)リンパ浮腫治療におけるシンプルリンパドレナージの扱い:
通院治療が主体であり、用手的リンパドレナージを実施できる医療施設が少ない日本では、患者さんが自ら実施するシンプルリンパドレナージ(=セルフリンパドレナージ)や家族・介助者が実施するシンプルリンパドレナージが一般的に行われているのが現状である。しかし、その効果についてはエビデンスが不十分であり、意義、どのような患者・病態に必要か、などの適応や具体的内容、禁忌などを今後確立していく必要がある。 
4)リンパ浮腫治療における薬物療法:
現時点ではリンパ浮腫単独に対する効果的な薬剤はない。進行再発期と緩和医療期では全身浮腫に対して、その病態に応じて種々の薬剤を使用する。

リンパ浮腫治療における弾性スリーブ・ストッキングの保険導入(療養費払い)。

● 特定がん手術前後にリンパ浮腫に対する適切な指導を個別に実施した場合の管理料を新設する。
      →リンパ浮腫指導管理料 100点(入院中1回)
● 四肢リンパ浮腫に対する弾性着衣(ストッキング等)が療養費対象となる。
(いずれも200841日より適用)
平成22年度から以下が加わりました。
当該保険医療機関入院中にリンパ浮腫指導管理料を算定した患者であって、当該保険医療機関を退院したものに対して、当該保険医療機関において、退院した日の属する月又はその翌月にリンパ浮腫の重症化等を抑制するための指導を再度実施した場合に、1回に限り算定する。

令和2年度(2020年)から、原発性(一次性)リンパ浮腫にも適用されるようになりました。

リンパ浮腫治療にかかる保険適用内容 2008

*以下に厚労省などの各HPからそのまま掲載致しましたが、正確には各HPの原文をご確認ください。

リンパ浮腫治療にかかる保険適用内容
● 特定がん手術前後にリンパ浮腫に対する適切な指導を個別に実施した場合の管理料を新設する。→リンパ浮腫指導管理料 100点(入院中1回)
● 四肢リンパ浮腫に対する弾性着衣(ストッキング等)が療養費対象となる。
(いずれも2008年4月1日より適用)

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平成20年度診療報酬改定における主要改定項目について(案)
中医協総-1 (以下厚生労働省HP、2008.2.13掲載分より転載)

【III-1(がん医療の推進について)-⑤ 】 骨子【III-1-(8)】
第1 基本的な考え方
リンパ節郭清の範囲が大きい乳がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がんの手術後にしばしば発症する四肢のリンパ浮腫について、その発症防止のための指導について評価を行う。
第2 具体的な内容
リンパ浮腫の治療・指導の経験を有する医師又は医師の指示に基づき看護師、理学療法士が、子宮悪性腫瘍、子宮附属器悪性腫瘍、前立腺悪性腫瘍又は腋窩部郭清(腋窩リンパ節郭清術)を伴う乳腺悪性腫瘍に対する手術を行った患者に対し、手術前後にリンパ浮腫に対する適切な指導を個別に実施した場合の管理料を新設する。
リンパ浮腫指導管理料 100点(入院中1回)

[算定要件]
保険医療機関に入院中の患者であって、子宮悪性腫瘍、子宮附属器悪性腫瘍、前立腺悪性腫瘍又は腋窩部郭清を伴う乳腺悪性腫瘍に対する手術を行ったものに対して、医師又は医師の指示に基づき看護師等(准看護師を除く。)が当該手術を行った日の属する月又は当該手術を行った日の属する月の前月若しくはその翌月のいずれかにリンパ浮腫の重症化等を抑制するための指導を実施した場合に、入院中1回に限り算定する

[参考]四肢リンパ浮腫の重篤化予防を目的とした弾性着衣(ストッキング等)の購入費用については、医療技術評価分科会における検討結果を踏まえ、保険導入(療養費払い)の対象とする。 

診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について
保医発第0305001号 平成20年3月5日 厚生労働省保険局医療課長


B001-7 リンパ浮腫指導管理料
(1)    リンパ浮腫指導管理料は、手術前又は手術後において、以下に示す事項について個別に説明及び指導管理を行った場合に算定する。
ア リンパ浮腫の病因と病態
イ リンパ浮腫の治療方法の概要
ウ セルフケアの重要性と局所へのリンパ液の停滞を予防及び改善するための具体的実施方法 (イ) リンパドレナージに関すること
(ロ) 弾性着衣又は弾性包帯による圧迫に関すること
(ハ) 弾性着衣又は弾性包帯を着用した状態での運動に関すること
(ニ) 保湿及び清潔の維持等のスキンケアに関すること
エ 生活上の具体的注意事項
リンパ浮腫を発症又は増悪させる感染症又は肥満の予防に関すること
オ 感染症の発症等増悪時の対処方法
感染症の発症等による増悪時における診察及び投薬の必要性に関すること (2)    指導内容の要点を診療録に記載する。
(3)      手術前においてリンパ浮腫に関する指導を行った場合であって、結果的に手術が行われなかった場合にはリンパ浮腫指導管理料は算定できない。



弾性着衣(ストッキング等)の保険導入(療養費払い)(2008年3月19日)
保医発第0321001号 平成20年3月21目 厚生労働省保険局医療課長


四肢のリンパ浮腫治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給における留意事項について四肢のリンパ浮腫治療のために使用される弾性ストッキング、弾性スリーブ、弾性グローブ及び弾性包帯(以下「弾性着衣等」と言う。)にかかる療養費の支給については、「四肢のリンパ浮腫治療のだめの弾性着衣等に係る療養費の支給について」(平成20年3月21目保発第0321002号)により通知されたところであるが、支給に当たっての留意事項は以下のとおりであるので、周知を図られたい。
                                                     記

1 支給対象となる疾病

リンパ節郭清術を伴う悪性腫瘍(悪性黒色腫、乳腺をはじめとする腋窩部のリンパ節郭清を伴う悪性腫瘍、子宮悪性腫瘍、子宮附属器悪性腫瘍、前立腺悪性腫瘍及び膀胱をはじめとする泌尿器系の骨盤内のリンパ節郭清を伴う悪性腫瘍)の術後に発生する四肢のリンパ浮腫

2 弾性着衣(弾性ストッキング、弾性スリーブ及び弾性グローブ)の支給

(1)製品の着圧
30㎜Hg以上の弾性着衣を支給の対象とする。ただし、関節炎や腱鞘炎により強い着圧では明らかに装着に支障をきたす場合など、医師の判断により特別の指示がある場合は20㎜Hg以上の着圧であっても支給して差し支えない。

(2)支給回数
1度に購入する弾性着衣は、洗い替えを考慮し、装着部位毎に2着を限度とする。(パンティストッキングタイプの弾性ストッキングについては、両下肢で1着となることから、両下肢に必要な場合であっても2着を限度とする。また、例えば①乳がん、子宮がん等複数部位の手術を受けた者で、上肢及び下肢に必要な場合、②左右の乳がんの手術を受けた者で、左右の上肢に必要な場合及び③右上肢で弾性スリーブと弾性グローブの両方が必要な場合などは、医師による指示があればそれぞれ2着を限度として支給して差し支えない。)
また、弾性着衣の着圧は経年劣化することから、前回の購入後6ヶ月経過後において再度購入された場合は、療養費として支給して差し支えない。

(3)支給申請費用
療養費として支給する額は、1着あたり弾性ストッキングについては28,000円(片足用の場合は25,000円)、弾性スリーブにっいては16,000円、弾性グローブについては15,000円を上限とし、弾性着衣の購入に要した費用の範囲内とすること。

3 弾性包帯の支給
(1)支給対象
弾性包帯については、医師の判断により弾性着衣を使用できないとの指示がある場合に限り療養費の支給対象とする。

(2)支給回数
1度に購入する弾性包帯は、洗い替えを考慮し、装着部位毎に2組を限度とする。
また、弾性包帯は経年劣化することから、前回の購入後6ヶ月経過後において再度購入された場合は、療養費として支給して差し支えない。

(3)支給申請費用
療養費として支給する額は、弾性包帯については装着に必要な製品(筒状包帯、パッティング包帯、ガーゼ指包帯、粘着テープ等を含む)1組がそれぞれ上肢7,000円、下肢14,000円を上限とし、弾性包帯の購入に要した費用の範囲内とすること。

4 療養費の支給申請書には、次の書類を添付させ、治療用として必要がある旨を確認した上で、適正な療養費の支給に努められたいこと。

(1)療養担当に当たる医師の弾性着衣等の装着指示書(装着部位、手術日等が明記されていること。別紙様式を参照のこと。)
(2)弾性着衣等を購入した際の領収書又は費用の額を証する書類。
 

保発第0321002号 平成20年3月21日厚生労働省保険局長
四肢のリンパ浮腫治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給について

標記については、今般、中央社会保険医療協議会において、新たな技術として保険適用(療養費として支給)することが承認されたことから、四肢のリンパ浮腫治療のための弾性ストッキング、弾性スリーブ、弾性グローブ及び弾性包帯(以下「弾性着衣等」と言う。)に係る療養費の取扱いを下記のとおりとするので、関係者に対し周知を図るとともに、その実施に遺憾のないようご配慮いただきたい。

                                                      記

1 目的
腋窩、骨盤内の広範なリンパ節郭清術を伴う悪性腫瘍の術後に発生する四肢のリンパ浮腫の重篤化予防を目的とした弾性着衣等の購入費用について、療養費として支給する。

2 支給対象
上記悪性腫瘍術後の四肢のリンパ浮腫の治療のために、医師の指示に基づき購入する弾性着衣等にっいて、療養費の支給対象とする。
なお、弾性包帯については、弾性ストッキング、弾性スリーブ及び弾性グローブを使用できないと認められる場合に限り療養費の支給対象とする。

3 適用年月目
本通知による取扱いは、平成20年4月1日から適用する。

平成28年度診療報酬改定(2016年)

質の高いリハビリテーションの評価等⑧
リンパ浮腫の複合的治療等
 
リンパ浮腫に対する治療を充実するため、リンパ浮腫に対する複合的治療について項目を新設し、またリンパ浮腫指導管理料の実施職種に作業療法士を追加する。
(新)リンパ浮腫複合的治療料
    1. 重症の場合(1日につき)200点
    2. 1以外の場合(1日につき)100点 
 
【算定要件]
対象 乳がん等に続発したリンパ浮腫で、国際リンパ学会による病期分類I期以降の患者。 II後期以降を重症とする。
回数 重症の場合は治療を開始した月とその翌月は2月合わせて11回、治療を開始した月の翌々月からは月1回。重症以外の場合は、6月に1回。
実施職種 専任の医師が直接行うもの、又は専任の医師の指導監督の下、専任の看護師、理学療法士又は作業療法士が行うものについて算定。あん摩マッサージ指圧師(当該保険医療機関に勤務する者で、資格を取得後、2年以上業務に従事(うち6月以上は保険医療機関において従事)し、適切な研修を修了した者に限る。)が行う場合は、専任の医師、看護師、理学療法士又は作業療法士が事前に指示し、かつ事後に報告を受ける場合に限り算定。
内容  弾性着衣又は弾性包帯による圧迫、圧迫下の運動、用手的リンパドレナージ、患肢のスキンケア、体重管理等のセルフケア指導等を適切に組み合わせ、重症については1回40分以上、それ以外の場合は1回20分以上行った場合に算定。一連の治療において、患肢のスキンケア、体重管理等のセルフケア指導は必ず行う。また、重症の場合は、毎回の治療において弾性着衣又は弾性包帯による圧迫を行う。

 
[施設基準]
(1)当該保険医療機関に、次の要件を全て満たす専任の常勤医師1名及び専任の常勤看護師、常勤理学療法士又は常勤作業療法士1名が勤務
①それぞれの資格を取得後2年以上経過していること。
②直近2年以内にリンパ浮腫を5例以上経験していること。
③リンパ浮腫の複合的治療について適切な研修(医師については座学33時間、医師以外の職種については加えて実技67時間)を終了していること。
(2)当該保険医療機関又は連携する別の保険医療機関において、直近1年間にリンパ浮腫指導管理料を50回以上算定していること。
(3)当該保険医療機関又は連携する別の保険医療機関において、入院施設を有し、内科、外科又は皮膚科を標榜し、蜂窩織炎に対する診療を適切に行うことができる。
 
【コメント】
 本内容は、がん拠点病院におけるリハビリとしてのチーム医療が前提となっているものと思われる。作業療法士が加わったことと、あん摩マッサージ指圧師においても医療機関内で医師の指導監督の下であれば施術可能と明記されたことは画期的なことである。逆に、このことは医療施設外でのいわゆるマッサージ治療院等での治療行為は認められていないことを意味すると思われる。なお、柔整師およびいわゆる市井のリンパドレナージストは含まれない(医療機関でも散見されるが、少なくとも保険診療には含まれない。後者の市井のリンパドレナージストが医療機関内で治療行為を行うことは違法である)。


 適切な研修(医師については座学33時間、医師以外の職種については加えて実技67時間)は、厚労省委託事業新リンパ浮腫研修で行われる内容であり、また、それに準ずる内容でも可能であると思われる。いわゆるリンパ浮腫療法士(LT)の「資格」は不要である。今回の改定の要件を満たす医療者は、そのままLTの受験要件も満たし「資格」も与えられるため、LTが診療報酬改定の要件になっているとの誤解が一部で生じているが誤りである。
 保険点数が重症40分以上で200点、それ以外は100点を考慮すると、費用的にいわゆるリンパドレナージを十分に行える内容ではなく、むしろ、経過観察およびセルフケアの指導に重点をおいた内容と考える。リンパ浮腫の治療はリンパドレナージが主体ではなく、弾性着衣の着用および日常生活上の注意が本態であることを考慮すると十分な点数であり、むしろこの機会に”リンパドレナージ信仰”から脱却する良い機会である。

 リンパ浮腫診療の医師について、リンパ浮腫を作ってしまう側の医師とリンパ浮腫ができてから診る医師に分けると理解しやすい。以前はリンパ浮腫自体が知られておらず診療報酬もつかなかったため大病院で扱うことはなく、症状が悪化してから後者の医師が診ていた。これは主に脈管外科医や脈管内科医(私はここに入る)である。一方で最近は手術の後遺症として知られてきたため、手術を行いリンパ浮腫を作り出してしまう側の医師・医療機関が動き始め、組織内で看護師、リハビリなどと協力して対応するようになってきた。今回の案は後者の立場を念頭に作られているように思われる。同時に、その方がリンパ浮腫の治療としてはより早い対応が可能となり好ましいと思われる。
 

令和2年3月27日(2020年)
「四肢のリンパ浮腫治療のための弾性着衣等に係る療養費の
支給における留意事項について」の一部改正について:

 「鼠径部、骨盤部若しくは腋窩部のリンパ節郭清を伴う悪性腫瘍の術後に発生する
四肢のリンパ浮腫又は原発性の四肢のリンパ浮腫」
が加わり、いわゆる、原発性リンパ浮腫も弾性着衣の保険適用となりました。

 

 

リンパ浮腫関連知識

リンパ浮腫治療は医療行為です。

治療というよりはリハビリに近いので安易に行われる傾向にあります。
中心的な複合的理学療法であるリンパドレナージ、包帯法、弾性着衣類の選択などが誰がどの範囲で可能かを考慮する必要があります。

 

Ⅰ.医師法

第17条            医師でなければ、医業をなしてはならない
第20条           医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。

 

Ⅱ.医療法
第1条      この法律は、医療を受ける者による医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項、医療の安全を確保するために必要な事項、病院、診療所及び助産所の開設及び管理に関し必要な事項並びにこれらの施設の整備並びに医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を推進するために必要な事項を定めること等により、医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする。
 

Ⅲ.混合診療
日本医師会医療政策会議(平成15年3月)
「混合診療」という概念の本質は, 保険診療と保険外診療の診察行為自体が混在するのではなく, 保険給付(一部負担金を含む) と保険外の患者負担との混在, すなわち「費用の混在」を指すのである。 

Ⅳ.保健師助産師看護師法
第5条      この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。
第6条      この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。


Ⅴ.理学療法士及び作業療法士法
第2条 この法律で「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。
2 この法律で「作業療法」とは、身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を 図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせることをいう
3 この法律で「理学療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者をいう。
4 この法律で「作業療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、作業療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、作業療法を行なうことを業とする者をいう。

 Ⅵ.あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律
第1条 医師以外の者で、あん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。
第12条 何人も、第1条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。
ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和45年法律第19号)の定めるところによる。

*「当該医業類似行為の施術が医学的観点から少しでも人体に危害を及ぼすおそれがあれば、人の健康に害を及ぼす恐れがあるものとして禁止処罰の対象となる」(医発第二四七号の一各都道府県知事あて厚生省医務局長通知)。

 
Ⅶ.柔道整復師法
第15条 医師である場合を除き、柔道整復師でなければ、業として柔道整復を行なつてはならない。(外科手術、薬品投与等の禁止)

第16条 柔道整復師は、外科手術を行ない、又は薬品を投与し、若しくはその指示をする等の行為をしてはならない。(施術の制限)
第17条     柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当をする場合は、この限りでない。

(参考)
医行為と医業類似行為 (日本予防医学行政審議会HPより抜粋)
療術師の行う業務の範囲は、広義にとらえた医療行為の一分野(社会通念上の分類)ですが、これを法律は 医行為と医業類似行為として分類しています。医行為は、医師の行う医療行為のみに使われます。医業類似行為は更に按摩、マッサージ指圧、鍼灸、柔道整復業(以下、鍼、指圧と略す)と療術に分類されます。

-医業類似行為の種類-
(1)通称:あはき法:・按摩マッサージ師・鍼師・灸師・柔道整復師
(2)療術:・療術師 ・カイロ、整体、リフレ、アロマ等

*「元来、医行為と称されるものには、人の疾病の診察、又は治療、予防の目的をもって人体になす行為とする広義のものと、その広義の医行為中医師が行うものでなければ人体に対して危害を生ずるおそれがある行為とする狭義のものとがあり、狭義の医行為を業としてなすのが本条(医師法第17条)の規定する医業であると解すべきである。」 (S37.2.22 熊本地裁判決)

*国家資格のないあん摩マッサージ指圧師の方は医療行為であるリンパ浮腫の治療は行えません。また、2016年の保険収載では柔道整復師は含まれません。


*保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年四月三十日厚生省令第十五号)
最終改正:平成二一年一二月二八日厚生労働省令第一六八号
(施術の同意)
第十七条 保険医は、患者の疾病又は負傷が自己の専門外にわたるものであるという理由によつて、みだりに、施術業者の施術を受けさせることに同意を与えてはならない。

(注)リンパ浮腫はわからないから、もしくは、患者さんが希望するから、という理由で、リンパドレナージ施術および「リンパ浮腫の治療」目的で、医師がリンパ浮腫の患者さんに、いわゆる「リンパ浮腫に詳しい」マッサージ治療院を紹介することはできないことになります。

(特殊療法等の禁止)
第十八条 保険医は、特殊な療法又は新しい療法等については、厚生労働大臣の定めるもののほか行つてはならない。

Ⅷ.薬事法
第8章                医薬品等の広告

(誇大広告等)
第66条         何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の効能、効果又は性能について、医師その他の者 がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項 に該当するものとする。

(承認前の医薬品等の広告の禁止)
第68条 何人も、第14条第1項又は第23条の2第1項に規定する医薬品又は医療機器であつて、まだ第14条第1項若しくは第19条の2第1項の規定による承認又は第23条の2第1項の規定による認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

第4章 医薬品等の製造販売業及び製造業
(製造販売業の許可)
第12条 次の表の上欄に掲げる医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の種類に応じ、それぞれ同表の下欄に定める厚生労働大臣の許可を受けた者でなければ、それぞれ、業として、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の製造販売をしてはならない。
 
医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の種類 許可の種類
第49条第1項に規定する厚生労働大臣の指定する医薬品 第1種医薬品製造販売業許可
前項に該当する医薬品以外の医薬品 第2種医薬品製造販売業許可
医薬部外品 医薬部外品製造販売業許可
化粧品 化粧品製造販売業許可
高度管理医療機器 第1種医療機器製造販売業許可
管理医療機器 第2種医療機器製造販売業許可
一般医療機器 第3種医療機器製造販売業許可

 
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