リンパ浮腫に関する話題

リンパ浮腫と脂肪浮腫・リンパ浮腫における蜂窩織炎・手の甲のリンパ浮腫の治療・弾性着衣着用方法・リンパ管静脈吻合術・外陰部リンパ浮腫

●「病院なび」における「閉院」掲載問題について:
 2019年9月に削除されるまで、約2年間に渡り、医療機関検索サイト「病院なび」において当院が閉院されたとの一方的に誤った情報発信がなされておりましたが、このたびサイトを運営する株式会社e-ヘルスケアとの話し合いの結果、謝罪を受けたことをご報告申し上げます。(2021.4)


●日本ではあまり馴染みはないですが、脂肪浮腫Lipedema (スライド動画)(カッコ内クリックで別途、説明文へリンク)という疾患があります。女性で、上半身は普通なのに下半身から脚にかけて太めであることが特徴で、いわゆる下半身肥満となります。肥満として減量を心がけても効果が見られないのが特徴でもありますが、初期であれば効果は期待できます。食事と運動療法が主体ですがリンパドレナージも行われます。むくみも伴う事から一次性リンパ浮腫と診断されてしまうこともありますが、本来の一次性リンパ浮腫ではありません。(Apr.20,2021改変)

●リンパ浮腫における患肢周径は体重の影響がとても強いです。肥満云々ではなく、体重が増えるとその分だけ周径は太く、体重が減るとその分だけ細くなります。体調がまず基本ですから、減量すればするほど良いとは言えませんが、体重が多めの方はまず減量がすべての治療に優先します。おそらく脂肪浮腫の考え方が関与していると思われます。(Aug.3,2019)

●リンパ浮腫の腕や脚の色は本来は健側より白いです。そのため、リンパ浮腫の腕や脚がわずかに赤味を帯びている場合の考え方は難しいです。蜂窩織炎とまで言えないけれど、やっぱり何となく赤くて、少し皮膚も張っている感じもする。このような状態を急性皮膚炎と呼ぶ方もいます。呼称はともかく、そのような場合の治療の基本は、やはり”炎症”があるものとして対応しないと治療効果があがません。ただし、この考え方は異論もある事と存じます。(Apr.20,2021改変)

●リンパ浮腫の経過中に極めて稀にリンパ管肉腫(Lymphangiosarcoma,Stewart Treves Syndrome)という悪性疾患が発症することがあります。初めは内出血様の所見ですが、進行はとても速くかつ予後も悪いとされています。皮膚科医など一般の医師にもあまり馴染みがないのが実情ですが、できるだけ早い段階での対応が望まれます。(Apr.30,2021)

手の甲のむくみ:乳がん術後の腕のむくみは理論上リンパ節切除周辺部位から発症します。当たり前ですが、手術で侵襲が加わるのは腋窩であり、手の甲は本来無関係です。ですが、腋窩から手の方へ水のように落ちていくためむくみます。したがって、手を上げてさえいれば手はむくみません。それが出来ない時間帯は仕方ないから弾性グローブなどで圧迫しておきます。そのため、治療としては、初期であれば上げ続けていれば必ずむくみは取れます。私は3週間ほどは手の治療を優先して頑張ってほしい、と患者さんにお願いします。むくみが長く続くと、皮下組織内は伸びたセーターのように元に戻らなくなりますが、初期では戻ります。なお、蜂窩織炎など他の要因ががある場合は上げているだけで改善しない場合もあり、対応は異なります。(March.18一部追加修正,2020)

●ある程度むくんだ場合のリンパ浮腫治療の基本は、腕や脚のむくみを体幹部に流し込む”圧”が最も重要です。
圧には①上から下へ流す②外から内へ圧迫する、の2つがあります。日常生活を考えた場合、腕では上げておくとむくみは改善できますが、上げ続けることができない場合には適度に圧迫が必要となります。脚はほぼ常に下にありますので、圧迫が必須となります。運動療法やリンパドレナージはより効率的に流そうとする方法であり、リンパ管静脈吻合術は少しでも流れる道を増やそうとするものですが、いずれも補助的な方法であり、セルフケアとしての優先順位は徐々に低くなります。(Apr.16,2019)

弾性ストッキングの履き方は一般的に足部を裏返しにして2枚にして一気に踵近くまで押し込むようにします。しかし、布地が二重になるためきつくて履きにくい事があります。ここでは、裏返しにしないで、1枚のまま素直にまっすぐ履き始めて引き上げる方法をご紹介します。(Apr.10,2019)
●もう一つ、グリップシートという製品をご紹介します。大変シンプルな製品で、裏表とも強いゴムのような粘着性がありますので、その上に踵を載せて、すべらない引っ掛かりを利用して脚の力で踵部までストッキングを入れてしまいます。
外陰部リンパ浮腫リンパ管静脈吻合術に関しては”むくみについて”の”学術的視点から”に移行致しました。
 

むくみについて

特にリンパ浮腫について

 むくみ(浮腫)とは、血液中の体液が血管外に濾出するなどして、皮下組織に水分が過剰にたまった状態を言います。
 大きく、全身性のむくみと局所性のむくみに分けます。全身性浮腫には心臓性、腎性、肝臓性など、局所性浮腫には静脈性やリンパ性などがあります。 全身性では原疾患の治療が必要ですが、女性特有の特発性浮腫などは一般的な内科的治療の対象とはなりません。局所性浮腫は見た目は元気ですが、むくんでいる脚や腕に一般的な考え方では対応しにくい症状が認められます。このHPでは、一般内科的には取り上げられない浮腫や局所性浮腫、とくにリンパ浮腫を中心に取り上げます。
 リンパ浮腫は乳癌や子宮癌の術後などに見られる事の多い、主に一側だけの腕や足のむくみです。2008年4月の弾性スリーブ・ストッキングの保険適用以来かなり知られてきましたが、一次性リンパ浮腫における保険適用がないこと、弾性着衣以外の治療に関しても保険適用がないこと、などの問題点がありました。2016年にはいわゆる複合的治療(複合的理学療法を中心とする内科的保存治療)の保険適用が加わりましたが、これはがん拠点病院などにおけるがん術後の後遺症としてのリンパ浮腫に対する内容が主体と思われ、また、その内容も制限があるように思われます。
 このHPは、リンパ浮腫を広く知って頂くと同時に、現状をさらに改善したいとの思いから開設しています。術後リンパ浮腫を発生しやすい、がんの手術に携わる外科系医師、婦人科医、循環器医など幅広い方々にもご一読頂ければ幸いです。
        クリニック待合室・マッサージ室
        クリニック待合室・マッサージ室

リンパ浮腫治療のポイント

*弾性スリーブ・ストッキング(弾性着衣)着用の際、腕や脚の付け根などで食い込まないことが大変重要です。「弾性スリーブ・ストッキングが合わない」のではなく「着用の仕方がうまくいっていない」ケースが大変多くみられます。「合わないから新しい弾性スリーブ・ストッキングを買う」のでなく、手持ちの弾性スリーブ・ストッキングをうまく利用することを試みましょう。
*炎症(蜂窩織炎)やほかの疾患の場合も、リンパドレナージなどのリンパ浮腫の治療を一生懸命行っても良くなりません。その意味で、リンパ浮腫の治療のもっとも重要なのは「正しい診断」です。正しい診断の下で、「必要最小限の治療」をされることをお勧め致します。
*リンパ浮腫は、多くの場合、腕や脚の付け根付近のリンパ節を切除した場合に発症する左右差のあるむくみです。緩和ケア等でみられる両側性のむくみのほとんどはリンパ浮腫ではありません。
*二次性(術後)リンパ浮腫は腕や脚の付け根から始まります。下肢の場合は陰部にむくみがでることがありますが、初期に対応することが大切です。また、初期に対応すればそれほど心配はありません。
*むくみはその時その時移動しています。圧(重力と弾性着衣)のかけ方ですぐに変わります。はじめは鼠径部にあったむくみも徐々に下の方に落ちていき、いわゆる”脚のむくみ”になります。その意味で、脚全体のむくみとして考えて対応しましょう。逆に”この部位のむくみは取りたい”ということもあります。

リンパ浮腫治療の予防について

 2008年リンパ浮腫の発症予防に関して「リンパ節郭清の範囲が大きい乳がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がんの手術後にしばしば発症する四肢のリンパ浮腫について、その発症防止のための指導について評価を行う。」 との 決定がなされました。弾性着衣の着用はいったんむくんだ場合のリンパ浮腫においては主体となる治療ですので大変嬉しいことです。
 一方で、手術をしたすべての方がリンパ浮腫になるわけではないので、発症予防目的のためのリンパドレナージや弾性スリーブ・ストッキング(または弾性包帯)着用の施行については十分な配慮が必要です。予防目的で安易に弾性スリーブを着用するとかえって手がむくむこともありますし、セルフリンパドレナージを行うのはややもすると、「やらなければむくむ」という強迫観念に近いものが生まれがちです。複合的理学療法はリンパ浮腫が発症した後における対処法です。
 つい何か積極的に見える対応を行いたい誘惑にかられますが、リンパ系の特性上、けして劇的効果や完治を期待できるものではありません。無駄のないよう、あくまで、主治医の先生や医療関係者の方ともご相談の上、何が必要かを判断した上で予防さらには治療をされることをお勧めします。(2019.3.17)

 
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