最近の話題

●外陰部浮腫(女性)について:あまり話題になりませんが、脚のリンパ浮腫では陰部がむくむことも多いです。脚のリンパ浮腫では下腹部もむくみますが、その一番下は外陰部です。さらにいわゆる下腹部は普通の皮膚ですが、陰部は粘膜に近く軟らかいので、むくむ時はタポーッと垂れてきます。それ自体は大きな問題はないのですが、軟らかい皮膚に常にむくみが溜まって腫れていると、時に破れて液が漏れてきたり(リンパ漏)、イボ(疣贅)ができてきたりする事があります。いったんそのような状況になると治療しにくいのが実際です。
 多くの場合朝方には少し良くなりますが、生活していると夕方ごろに悪化します。この状態は当然ながら見えませんが、陰部が重くなったように感じる方が多いようです。したがって対応としてはずっと寝ていると良いわけですが、そうもいきませんので日中活動時は圧迫しておきます。圧迫の方法は様々あり、製品としてはV2サポーター®などがありますが、とりあえずは生理用品などを利用する方が多いようです。下着を2枚履いて間に化粧用パフを置く方法は結構効果があるようです。なお、男性の場合は対応が異なります。(Aug.3,2019)
●リンパ浮腫における患肢周径は体重の影響がとても強いです。肥満云々ではなく、体重が増えるとその分だけ周径は太く、体重が減るとその分だけ細くなります。体調がまず基本ですから、減量すればするほど良いとは言えませんが、体重が多めの方はまず減量がすべての治療に優先します。おそらく脂肪浮腫の考え方が関与していると思われます。(Aug.3,2019)
●ある程度むくんだ場合のリンパ浮腫治療の基本は、腕や脚のむくみを体幹部に流し込む”圧”が最も重要です。
圧には①上から下へ流す②外から内へ圧迫する、の2つがあります。日常生活を考えた場合、腕では上げておくとむくみは改善できますが、上げ続けることができない場合には適度に圧迫が必要となります。脚はほぼ常に下にありますので、圧迫が必須となります。運動療法やリンパドレナージはより効率的に流そうとする方法であり、リンパ管静脈吻合術は少しでも流れる道を増やそうとするものですが、いずれも補助的な方法であり、セルフケアとしての優先順位は徐々に低くなります。(Apr.16,2019)
●最近、リンパ浮腫の治療として、手術(リンパ管細静脈吻合など)が話題となることが多くなりました。手術は多くの疾患で、”最後の手段”のような位置づけの場合がありまます。しかし、リンパ浮腫においては必ずしもそうではないと思われます。手術を施行する形成外科医からも、手術しても劇的な効果は期待できないこと、また、手術して繫いだリンパ管と静脈の何割かは数年で閉鎖してしまうことなどが報告されています。これは、手術は深部のリンパ管を用いるのではなく、術前のICG検査自体が表在の極めて細いバイパスのリンパ管を描出しているので、深部の、より太いリンパ管を使用できればより良いとも言えるかもしれません。手術は治療の第一選択ではなく、まず保存的治療が優先するものと考えた方が良いと思われます。(Nov.29,2016、Mar.25,2019 )
●2019年3月3日本リンパ浮腫学会シンポジウム「外科治療の効果と限界」において活発な議論がなされました。上記のように手術は”最後の手段”と思いがちですが、形成外科医は、重症例ではリンパ管の変性(リンパ管硬化など)が進んでいるため治療成績は悪いので、より初期・軽症の段階で行った方が成績は良い、との考えが多いようです。逆に、 リンパ浮腫診療ガイドライン2018年版(金原出版) では、初期・軽度の時期は保存的治療(複合的治療)が推奨されておりますので、この時期の治療の選択には十分な注意が必要です。(Mar.25,2019)

むくみについて

 むくみ(浮腫)とは、血液中の体液が血管外に濾出するなどして、皮下組織に水分が過剰にたまった状態を言います。
 大きく、全身性のむくみと局所性のむくみに分けます。全身性浮腫には心臓性、腎性、肝臓性など、局所性浮腫には静脈性やリンパ性などがあります。 全身性では原疾患の治療が必要ですが、女性特有の特発性浮腫などは一般的な内科的治療の対象とはなりません。局所性浮腫は見た目は元気ですが、むくんでいる脚や腕に一般的な考え方では対応しにくい症状が認められます。このHPでは、一般内科的には取り上げられない浮腫や局所性浮腫、とくにリンパ浮腫を中心に取り上げます。
 リンパ浮腫は乳癌や子宮癌の術後などに見られる事の多い、主に一側だけの腕や足のむくみです。2008年4月の弾性スリーブ・ストッキングの保険適用以来かなり知られてきましたが、一次性リンパ浮腫における保険適用がないこと、弾性着衣以外の治療に関しても保険適用がないこと、などの問題点がありました。2016年にはいわゆる複合的治療(複合的理学療法を中心とする内科的保存治療)の保険適用が加わりましたが、これはがん拠点病院などにおけるがん術後の後遺症としてのリンパ浮腫に対する内容が主体と思われ、また、その内容も制限があるように思われます。
 このHPは、リンパ浮腫を広く知って頂くと同時に、現状をさらに改善したいとの思いから開設しています。術後リンパ浮腫を発生しやすい、がんの手術に携わる外科系医師、婦人科医、循環器医など幅広い方々にもご一読頂ければ幸いです。

リンパ浮腫治療のポイント

*弾性スリーブ・ストッキング(弾性着衣)着用の際、腕や脚の付け根などで食い込まないことが大変重要です。「弾性スリーブ・ストッキングが合わない」のではなく「着用の仕方がうまくいっていない」ケースが大変多くみられます。「合わないから新しい弾性スリーブ・ストッキングを買う」のでなく、手持ちの弾性スリーブ・ストッキングをうまく利用することを試みましょう。
*炎症(蜂窩織炎)やほかの疾患の場合も、リンパドレナージなどのリンパ浮腫の治療を一生懸命行っても良くなりません。その意味で、リンパ浮腫の治療のもっとも重要なのは「正しい診断」です。正しい診断の下で、「必要最小限の治療」をされることをお勧め致します。
*リンパ浮腫は、多くの場合、腕や脚の付け根付近のリンパ節を切除した場合に発症する左右差のあるむくみです。緩和ケア等でみられる両側性のむくみのほとんどはリンパ浮腫ではありません。
*二次性(術後)リンパ浮腫は腕や脚の付け根から始まります。下肢の場合は陰部にむくみがでることがありますが、初期に対応することが大切です。また、初期に対応すればそれほど心配はありません。
*むくみはその時その時移動しています。圧(重力と弾性着衣)のかけ方ですぐに変わります。はじめは鼠径部にあったむくみも徐々に下の方に落ちていき、いわゆる”脚のむくみ”になります。その意味で、脚全体のむくみとして考えて対応しましょう。逆に”この部位のむくみは取りたい”ということもあります。

リンパ浮腫治療の予防について

 2008年リンパ浮腫の発症予防に関して「リンパ節郭清の範囲が大きい乳がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がんの手術後にしばしば発症する四肢のリンパ浮腫について、その発症防止のための指導について評価を行う。」 との 決定がなされました。弾性着衣の着用はいったんむくんだ場合のリンパ浮腫においては主体となる治療ですので大変嬉しいことです。
 一方で、手術をしたすべての方がリンパ浮腫になるわけではないので、発症予防目的のためのリンパドレナージや弾性スリーブ・ストッキング(または弾性包帯)着用の施行については十分な配慮が必要です。予防目的で安易に弾性スリーブを着用するとかえって手がむくむこともありますし、セルフリンパドレナージを行うのはややもすると、「やらなければむくむ」という強迫観念に近いものが生まれがちです。複合的理学療法はリンパ浮腫が発症した後における対処法です。
 つい何か積極的に見える対応を行いたい誘惑にかられますが、リンパ系の特性上、けして劇的効果や完治を期待できるものではありません。無駄のないよう、あくまで、主治医の先生や医療関係者の方ともご相談の上、何が必要かを判断した上で予防さらには治療をされることをお勧めします。(2019.3.17)

 
Copyright© 1998-2013 MUKUMI.COM 医療法人社団広田内科クリニック廣田彰男 All Rights Reserved.managed by RCMS