むくみの水はどこを流れるか
皮下組織クリアランス
むくみの液は何処を流れるか。
とても単純で、何気なく分かったように思っていることですが大変重要な問題です。
最近はリンパ管自体を見たり描出できたりして、リンパ管の走行や機能と結び付けて理解しようとする傾向があるように思われます。ですがリンパ管は基本はネット構造で体表面をくまなく覆っているとも言えます。
私の在籍していた東邦大学医学部循環器内科(恩師関清教授)では、30~40年前にすでにそのような研究がなされていました。当時はほとんど注目もされず知られてもいませんが、基本中の基本で改めて大切ではないかと思われる研究があります。
RISA Tissue Clearance(RISA組織クリアランス法) と言いますが、RI(アイソトープ)で標識された血清アルブミンを皮下(前脛骨部)に注入し、どのように消失していくかを見た研究です。
下の図の健康人(Normal)の方では、時間経過(左上から右下に行く)に従ってその濃度(山の高さ)はその場で徐々に低下していきます。すなわち、周囲に拡散されずに、(タンパクですから)リンパ管に吸収されて消失していきます。半分の量(半減期)になるには約1日かかります。一方でリンパ浮腫(Lmphedema)では周囲にまばらに拡散して行って、その濃度は(重症度により様々ですが)なかなか減少せず、この方では1日経っても半分に減少していません。
すなわち、リンパ浮腫ではむくみはその場のリンパ管に吸収されていくのではなく、むくんで挫滅しルーズになった皮下組織内を流れて拡散することになります。もちろんリンパ管に吸収される部分もあるとは思いますが、少なくともそれだけで説明を完結させてはならず、この皮下を動いて流れてしまう事実を認識しなくてはいけないでしょう。
そのため、結果的に足先がむくんだら足を上げて寝ていると細くなることになります。ただし、リンパ浮腫のむくみは”タンパク等の物質を含んだ”ねっとりした液であって、廃用性浮腫などリンパ浮腫以外のむくみの”水”とは異なりますので、対応は異なります。

他の浮腫疾患について半減期を見ると下図の通りになります。健常人(Normal)、ネフローゼ症候群(Nephrotic Edema)、心性浮腫(Cardiac edema)、低栄養性浮腫(Malabsorption S)、強皮症(Scleroderma)などではむくみのない場合(Edema ー)では健常人と同じですが、むくみのある場合(Edema +)では半減期はリンパ浮腫と違って延長しておらずむしろ早くなっている、すなわちリンパ浮腫以外の浮腫疾患ではむしろリンパ管機能は活発化しています。これはむくみを排除すべくリンパ管が活発化していることを示します。甲状腺低下症(Myxedema)、甲状腺機能亢進症(Hyperthyroidism)は病態が異なりますのでここでは省略します。廃用性浮腫は低栄養性浮腫と似ていますからリンパ管の働きはむしろ活発なはずですので、治療はリンパ浮腫とは異なる対応が必要となります。

文献:Seki.K.,Ishida.K.,Kobayashi,S.et al:Behavier of RISA in tissue in lymphedema.Folia. Angiol.,24:121-123,1976. (Aug.25,2025)
とても単純で、何気なく分かったように思っていることですが大変重要な問題です。
最近はリンパ管自体を見たり描出できたりして、リンパ管の走行や機能と結び付けて理解しようとする傾向があるように思われます。ですがリンパ管は基本はネット構造で体表面をくまなく覆っているとも言えます。
私の在籍していた東邦大学医学部循環器内科(恩師関清教授)では、30~40年前にすでにそのような研究がなされていました。当時はほとんど注目もされず知られてもいませんが、基本中の基本で改めて大切ではないかと思われる研究があります。
RISA Tissue Clearance(RISA組織クリアランス法) と言いますが、RI(アイソトープ)で標識された血清アルブミンを皮下(前脛骨部)に注入し、どのように消失していくかを見た研究です。
下の図の健康人(Normal)の方では、時間経過(左上から右下に行く)に従ってその濃度(山の高さ)はその場で徐々に低下していきます。すなわち、周囲に拡散されずに、(タンパクですから)リンパ管に吸収されて消失していきます。半分の量(半減期)になるには約1日かかります。一方でリンパ浮腫(Lmphedema)では周囲にまばらに拡散して行って、その濃度は(重症度により様々ですが)なかなか減少せず、この方では1日経っても半分に減少していません。
すなわち、リンパ浮腫ではむくみはその場のリンパ管に吸収されていくのではなく、むくんで挫滅しルーズになった皮下組織内を流れて拡散することになります。もちろんリンパ管に吸収される部分もあるとは思いますが、少なくともそれだけで説明を完結させてはならず、この皮下を動いて流れてしまう事実を認識しなくてはいけないでしょう。
そのため、結果的に足先がむくんだら足を上げて寝ていると細くなることになります。ただし、リンパ浮腫のむくみは”タンパク等の物質を含んだ”ねっとりした液であって、廃用性浮腫などリンパ浮腫以外のむくみの”水”とは異なりますので、対応は異なります。

他の浮腫疾患について半減期を見ると下図の通りになります。健常人(Normal)、ネフローゼ症候群(Nephrotic Edema)、心性浮腫(Cardiac edema)、低栄養性浮腫(Malabsorption S)、強皮症(Scleroderma)などではむくみのない場合(Edema ー)では健常人と同じですが、むくみのある場合(Edema +)では半減期はリンパ浮腫と違って延長しておらずむしろ早くなっている、すなわちリンパ浮腫以外の浮腫疾患ではむしろリンパ管機能は活発化しています。これはむくみを排除すべくリンパ管が活発化していることを示します。甲状腺低下症(Myxedema)、甲状腺機能亢進症(Hyperthyroidism)は病態が異なりますのでここでは省略します。廃用性浮腫は低栄養性浮腫と似ていますからリンパ管の働きはむしろ活発なはずですので、治療はリンパ浮腫とは異なる対応が必要となります。

文献:Seki.K.,Ishida.K.,Kobayashi,S.et al:Behavier of RISA in tissue in lymphedema.Folia. Angiol.,24:121-123,1976. (Aug.25,2025)
むくみの濃度と組成
浮腫液の組成と疾患別差異
毛細血管領域では、血液(血漿)のほとんどは動脈から静脈へ素通りし、血管外へ濾出される体液量はわずかとされています。その体液は毛細血管領域において動脈側の小さな隙間から濾出して大半は静脈側に還り、ほんの一部(約20リットル/日)とタンパクなどの物質はリンパ管に還るとされています。
そんなに少なくてどのように体液量の調整に役立っているかというと、洗面台の横に開いている小さな排水口(オーバーフロー穴)を思い浮かべると分かりやすいかと思います。洗面台の下についているメインの排水管が何らかの影響で流れが悪くなると水が溜まります。これが静脈で一般的なむくみの主役です。一方で洗面台に水が溜まっても、オーバフロー穴があるお陰で洗面台の水が溢れることはありません。逆に言うとその小さなオーバーフロー穴の能力を超えた時には溢れてしまいます。
リンパ管も同様に考えると、様々な要因でむくんできてもオーバーフロー穴(リンパ管)が排水できればむくまないのですが、排水できなければむくみます。ここでオーバーフロー穴が詰まり気味になってきたのがリンパ浮腫、そのためただでさえ水が溜まり気味なのに水道の蛇口を捻って水を出してしまっている状態(血管透過性亢進により体液が血管外に大量に漏れ出る)が蜂窩織炎とも言えます。
すなわち、いかなるむくみも”リンパ管の代償機能不全”で、極端に言うとすべてのむくみは”リンパ浮腫”となってしまい診断名としても散見されますが、過ちです。このようなしくみを理解をした上で正確な診断とそれに対する対応を考えなくてはなりません。
なお、このような微小循環系における体液の動きはStarlingの法則として知られていますが、近年は血管外へ漏出する体液量は極めて少なく、さらにいったん血管外に出た体液のほとんどはリンパ管に還る、とされています(文献1)。
この隙間は生理学的にpore theory(文献2)と呼ばれ、小さな small pore(半径40~50Å(オングストローム)) と 大きな large pore(116~350Å)などがありますが、圧倒的に前者が多く、通常の体液の通り道となっています。浮腫液組成は基本的にほぼ血清成分と同じですが、比較的小さな分子としてのアルブミン(分子量68,000)などは多く、大きなIgG(分子量150,000)などは少なく、血管壁の隙間が篩として働いていることが分かります。
浮腫液をその蛋白濃度により①low-protein class、②high-protein class、③third(high) protein classに分けます(文献3)と、①には低蛋白症性浮腫(0.1~0.3g/dl)心臓性浮腫(0.3~0.5g/dl)や静脈性浮腫(0.6~0.9g/dl)が含まれ、リンパ浮腫は②に含まれますが、重症度によりばらつきが多くなります。③には熱傷やアレルギーが含まれ4~6g/dlと極めて高い値を示し、これは血管壁の篩効果が失われたものと推測されています。リンパ浮腫における蜂窩織炎でも炎症として似たような状況であることが考えられるため、通常のリンパ浮腫とは異なる病態となっていますので対応も異なってきます。 (Aug.25,2025)
文献
1.Woodcock TE, Woodcock TM: Revised Starling equation and the glycocalyx model of transvascular fluid exchange: an improved paradigm for prescribing intravenous fluid therapy. Br J Anaesth; 108: 384 -394,2012.
2. Renkin,E.M.: Filtration ,diffusion and molecular sieving through porous cellulose membranes. J.Gen.Physiol.,38:225,1954.
3.Crockett,D.J.:The protein levels of oedema fluids. Lancet,271(6954):1179-1182,1956.
そんなに少なくてどのように体液量の調整に役立っているかというと、洗面台の横に開いている小さな排水口(オーバーフロー穴)を思い浮かべると分かりやすいかと思います。洗面台の下についているメインの排水管が何らかの影響で流れが悪くなると水が溜まります。これが静脈で一般的なむくみの主役です。一方で洗面台に水が溜まっても、オーバフロー穴があるお陰で洗面台の水が溢れることはありません。逆に言うとその小さなオーバーフロー穴の能力を超えた時には溢れてしまいます。
リンパ管も同様に考えると、様々な要因でむくんできてもオーバーフロー穴(リンパ管)が排水できればむくまないのですが、排水できなければむくみます。ここでオーバーフロー穴が詰まり気味になってきたのがリンパ浮腫、そのためただでさえ水が溜まり気味なのに水道の蛇口を捻って水を出してしまっている状態(血管透過性亢進により体液が血管外に大量に漏れ出る)が蜂窩織炎とも言えます。
すなわち、いかなるむくみも”リンパ管の代償機能不全”で、極端に言うとすべてのむくみは”リンパ浮腫”となってしまい診断名としても散見されますが、過ちです。このようなしくみを理解をした上で正確な診断とそれに対する対応を考えなくてはなりません。
なお、このような微小循環系における体液の動きはStarlingの法則として知られていますが、近年は血管外へ漏出する体液量は極めて少なく、さらにいったん血管外に出た体液のほとんどはリンパ管に還る、とされています(文献1)。
この隙間は生理学的にpore theory(文献2)と呼ばれ、小さな small pore(半径40~50Å(オングストローム)) と 大きな large pore(116~350Å)などがありますが、圧倒的に前者が多く、通常の体液の通り道となっています。浮腫液組成は基本的にほぼ血清成分と同じですが、比較的小さな分子としてのアルブミン(分子量68,000)などは多く、大きなIgG(分子量150,000)などは少なく、血管壁の隙間が篩として働いていることが分かります。
浮腫液をその蛋白濃度により①low-protein class、②high-protein class、③third(high) protein classに分けます(文献3)と、①には低蛋白症性浮腫(0.1~0.3g/dl)心臓性浮腫(0.3~0.5g/dl)や静脈性浮腫(0.6~0.9g/dl)が含まれ、リンパ浮腫は②に含まれますが、重症度によりばらつきが多くなります。③には熱傷やアレルギーが含まれ4~6g/dlと極めて高い値を示し、これは血管壁の篩効果が失われたものと推測されています。リンパ浮腫における蜂窩織炎でも炎症として似たような状況であることが考えられるため、通常のリンパ浮腫とは異なる病態となっていますので対応も異なってきます。 (Aug.25,2025)
文献
1.Woodcock TE, Woodcock TM: Revised Starling equation and the glycocalyx model of transvascular fluid exchange: an improved paradigm for prescribing intravenous fluid therapy. Br J Anaesth; 108: 384 -394,2012.
2. Renkin,E.M.: Filtration ,diffusion and molecular sieving through porous cellulose membranes. J.Gen.Physiol.,38:225,1954.
3.Crockett,D.J.:The protein levels of oedema fluids. Lancet,271(6954):1179-1182,1956.
むくみ 特にリンパ浮腫について
むくみ(浮腫)とは、血液中の体液が血管外に濾出するなどして、皮下組織に水分が過剰にたまった状態を言います。
大きく、全身性のむくみと局所性のむくみに分けます。全身性浮腫には心臓性、腎性、肝臓性など、局所性浮腫には静脈性やリンパ性などがあります。 全身性では原疾患の治療が必要ですが、女性特有の特発性浮腫などは一般的な内科的治療の対象とはなりません。局所性浮腫は見た目は元気ですが、むくんでいる脚や腕に一般的な考え方では対応しにくい症状が認められます。このHPでは、一般内科的には取り上げられない浮腫や局所性浮腫、とくにリンパ浮腫を中心に取り上げます。
リンパ浮腫は乳癌や子宮癌の術後などに見られる事の多い、主に一側だけの腕や足のむくみです。2008年4月の弾性スリーブ・ストッキングの保険適用以来かなり知られてきましたが、一次性リンパ浮腫における保険適用がないこと、弾性着衣以外の治療に関しても保険適用がないこと、などの問題点がありました。2016年にはいわゆる複合的治療(複合的理学療法を中心とする内科的保存治療)の保険適用が加わりましたが、これはがん拠点病院などにおけるがん術後の後遺症としてのリンパ浮腫に対する内容が主体と思われ、また、その内容も制限があるように思われます。
このHPは、リンパ浮腫を広く知って頂くと同時に、現状をさらに改善したいとの思いから開設しています。術後リンパ浮腫を発生しやすい、がんの手術に携わる外科系医師、婦人科医、循環器医など幅広い方々にもご一読頂ければ幸いです。 (Aug.25,2025)
大きく、全身性のむくみと局所性のむくみに分けます。全身性浮腫には心臓性、腎性、肝臓性など、局所性浮腫には静脈性やリンパ性などがあります。 全身性では原疾患の治療が必要ですが、女性特有の特発性浮腫などは一般的な内科的治療の対象とはなりません。局所性浮腫は見た目は元気ですが、むくんでいる脚や腕に一般的な考え方では対応しにくい症状が認められます。このHPでは、一般内科的には取り上げられない浮腫や局所性浮腫、とくにリンパ浮腫を中心に取り上げます。
リンパ浮腫は乳癌や子宮癌の術後などに見られる事の多い、主に一側だけの腕や足のむくみです。2008年4月の弾性スリーブ・ストッキングの保険適用以来かなり知られてきましたが、一次性リンパ浮腫における保険適用がないこと、弾性着衣以外の治療に関しても保険適用がないこと、などの問題点がありました。2016年にはいわゆる複合的治療(複合的理学療法を中心とする内科的保存治療)の保険適用が加わりましたが、これはがん拠点病院などにおけるがん術後の後遺症としてのリンパ浮腫に対する内容が主体と思われ、また、その内容も制限があるように思われます。
このHPは、リンパ浮腫を広く知って頂くと同時に、現状をさらに改善したいとの思いから開設しています。術後リンパ浮腫を発生しやすい、がんの手術に携わる外科系医師、婦人科医、循環器医など幅広い方々にもご一読頂ければ幸いです。 (Aug.25,2025)
リンパ浮腫治療の基本はセルフケア
●リンパ浮腫の治療はいうまでもなくセルフケアです。すなわち、可能なら患肢を上げて(挙上)、日常動き回る時間帯は手足の先にむくみが落ちてこないように弾性着衣で押さえます。そこにさらにもう一息良くするためにリンパドレナージや最近では手術などが考慮されます。運動療法はこの中間に入りますが、セルフケアに近いでしょう。ところが、患者さんも医療者もついセルフケアでない方法の方が、より高度な良い治療と思いがちです。ですが、治療効果のほとんどは体重管理を含めたセルフケアで、本来それ以上の費用は発生しないことにもなります。もう一度セルフケアを見直しましょう。
●広田内科クリニックHP(診療内容)が別途作成されています
https://hirotanaika.jp
●日本ではあまり馴染みはないですが、脂肪浮腫Lipedema (スライド動画)(カッコ内クリックで別途、説明文へリンク)という疾患があります。女性で、上半身は普通なのに特に腰部、および脚にかけて太めであることが特徴で、いわゆる下半身肥満となります。いわゆるむくみは水分ですので起立位では足先まで落ちていき脚がむくみますが、脂肪浮腫では脂肪分が落ちても腰部あたりまで来た所でいったん固まってしまうと考えるとイメージしやすいと思います。ウエスト付近の固まった脂肪(セルライト)は脚から心臓方向へのリンパや静脈の流れを阻害して脚のむくみが生じます。そのため肥満として減量を心がけても効果が見られないのが特徴でもありますが、初期であれば効果は期待できます。食事と運動療法が主体ですがリンパドレナージも行われます。むくみも伴う事から一次性リンパ浮腫と診断されてしまうこともありますが、本来の一次性リンパ浮腫ではありません。(Feb.3,2023改変)
●リンパ浮腫における患肢周径は体重の影響がとても強いです。肥満云々ではなく、体重が増えるとその分だけ周径は太く、体重が減るとその分だけ細くなります。体調がまず基本ですから、減量すればするほど良いとは言えませんが、体重が多めの方はまず減量がすべての治療に優先します。おそらく脂肪浮腫の考え方が関与していると思われます。(Aug.3,2019)
●リンパ浮腫の腕や脚の色は本来は健側より白いです。そのため、リンパ浮腫の腕や脚がわずかに赤味を帯びている場合の考え方は難しいです。蜂窩織炎とまで言えないけれど、やっぱり何となく赤くて、少し皮膚も張っている感じもする。このような状態を急性皮膚炎と呼ぶ方もいます。呼称はともかく、そのような場合の治療の基本は、やはり”炎症”があるものとして対応しないと治療効果があがません。ただし、この考え方は異論もある事と存じます。(Apr.20,2021改変)
●手の甲のむくみ:乳がん術後の腕のむくみは理論上リンパ節切除周辺部位から発症します。当たり前ですが、手術で侵襲が加わるのは腋窩であり、手の甲は本来無関係です。ですが、腋窩から手の方へ水のように落ちていくためむくみます。したがって、手を上げてさえいれば手はむくみません。それが出来ない時間帯は仕方ないから弾性グローブなどで圧迫しておきます。そのため、治療としては、初期であれば上げ続けていれば必ずむくみは取れます。私は3週間ほどは手の治療を優先して頑張ってほしい、と患者さんにお願いします。むくみが長く続くと、皮下組織内は伸びたセーターのように元に戻らなくなりますが、初期では戻ります。なお、蜂窩織炎など他の要因ががある場合は上げているだけで改善しない場合もあり、対応は異なります。(March.18一部追加修正,2020)
●ある程度むくんだ場合のリンパ浮腫治療の基本は、腕や脚のむくみを体幹部に流し込む”圧”が最も重要です。
圧には①上から下へ流す②外から内へ圧迫する、の2つがあります。日常生活を考えた場合、腕では上げておくとむくみは改善できますが、上げ続けることができない場合には適度に圧迫が必要となります。脚はほぼ常に下にありますので、圧迫が必須となります。運動療法やリンパドレナージはより効率的に流そうとする方法であり、リンパ管静脈吻合術は少しでも流れる道を増やそうとするものですが、いずれも補助的な方法であり、セルフケアとしての優先順位は徐々に低くなります。(Apr.16,2019)
●弾性ストッキングの履き方は一般的に足部を裏返しにして2枚にして一気に踵近くまで押し込むようにします。しかし、布地が二重になるためきつくて履きにくい事があります。ここでは、裏返しにしないで、1枚のまま素直にまっすぐ履き始めて引き上げる方法をご紹介します。(Apr.10,2019)
●もう一つ、グリップシートという製品をご紹介します。大変シンプルな製品で、裏表とも強いゴムのような粘着性がありますので、その上に踵を載せて、すべらない引っ掛かりを利用して脚の力で踵部までストッキングを入れてしまいます。 (Aug.25,2025)
●広田内科クリニックHP(診療内容)が別途作成されています
https://hirotanaika.jp

●日本ではあまり馴染みはないですが、脂肪浮腫Lipedema (スライド動画)(カッコ内クリックで別途、説明文へリンク)という疾患があります。女性で、上半身は普通なのに特に腰部、および脚にかけて太めであることが特徴で、いわゆる下半身肥満となります。いわゆるむくみは水分ですので起立位では足先まで落ちていき脚がむくみますが、脂肪浮腫では脂肪分が落ちても腰部あたりまで来た所でいったん固まってしまうと考えるとイメージしやすいと思います。ウエスト付近の固まった脂肪(セルライト)は脚から心臓方向へのリンパや静脈の流れを阻害して脚のむくみが生じます。そのため肥満として減量を心がけても効果が見られないのが特徴でもありますが、初期であれば効果は期待できます。食事と運動療法が主体ですがリンパドレナージも行われます。むくみも伴う事から一次性リンパ浮腫と診断されてしまうこともありますが、本来の一次性リンパ浮腫ではありません。(Feb.3,2023改変)
●リンパ浮腫における患肢周径は体重の影響がとても強いです。肥満云々ではなく、体重が増えるとその分だけ周径は太く、体重が減るとその分だけ細くなります。体調がまず基本ですから、減量すればするほど良いとは言えませんが、体重が多めの方はまず減量がすべての治療に優先します。おそらく脂肪浮腫の考え方が関与していると思われます。(Aug.3,2019)
●リンパ浮腫の腕や脚の色は本来は健側より白いです。そのため、リンパ浮腫の腕や脚がわずかに赤味を帯びている場合の考え方は難しいです。蜂窩織炎とまで言えないけれど、やっぱり何となく赤くて、少し皮膚も張っている感じもする。このような状態を急性皮膚炎と呼ぶ方もいます。呼称はともかく、そのような場合の治療の基本は、やはり”炎症”があるものとして対応しないと治療効果があがません。ただし、この考え方は異論もある事と存じます。(Apr.20,2021改変)
●手の甲のむくみ:乳がん術後の腕のむくみは理論上リンパ節切除周辺部位から発症します。当たり前ですが、手術で侵襲が加わるのは腋窩であり、手の甲は本来無関係です。ですが、腋窩から手の方へ水のように落ちていくためむくみます。したがって、手を上げてさえいれば手はむくみません。それが出来ない時間帯は仕方ないから弾性グローブなどで圧迫しておきます。そのため、治療としては、初期であれば上げ続けていれば必ずむくみは取れます。私は3週間ほどは手の治療を優先して頑張ってほしい、と患者さんにお願いします。むくみが長く続くと、皮下組織内は伸びたセーターのように元に戻らなくなりますが、初期では戻ります。なお、蜂窩織炎など他の要因ががある場合は上げているだけで改善しない場合もあり、対応は異なります。(March.18一部追加修正,2020)
●ある程度むくんだ場合のリンパ浮腫治療の基本は、腕や脚のむくみを体幹部に流し込む”圧”が最も重要です。
圧には①上から下へ流す②外から内へ圧迫する、の2つがあります。日常生活を考えた場合、腕では上げておくとむくみは改善できますが、上げ続けることができない場合には適度に圧迫が必要となります。脚はほぼ常に下にありますので、圧迫が必須となります。運動療法やリンパドレナージはより効率的に流そうとする方法であり、リンパ管静脈吻合術は少しでも流れる道を増やそうとするものですが、いずれも補助的な方法であり、セルフケアとしての優先順位は徐々に低くなります。(Apr.16,2019)
●弾性ストッキングの履き方は一般的に足部を裏返しにして2枚にして一気に踵近くまで押し込むようにします。しかし、布地が二重になるためきつくて履きにくい事があります。ここでは、裏返しにしないで、1枚のまま素直にまっすぐ履き始めて引き上げる方法をご紹介します。(Apr.10,2019)
●もう一つ、グリップシートという製品をご紹介します。大変シンプルな製品で、裏表とも強いゴムのような粘着性がありますので、その上に踵を載せて、すべらない引っ掛かりを利用して脚の力で踵部までストッキングを入れてしまいます。 (Aug.25,2025)
リンパ浮腫治療のポイント
*弾性スリーブ・ストッキング(弾性着衣)着用の際、腕や脚の付け根などで食い込まないことが大変重要です。「弾性スリーブ・ストッキングが合わない」のではなく「着用の仕方がうまくいっていない」ケースが大変多くみられます。「合わないから新しい弾性スリーブ・ストッキングを買う」のでなく、手持ちの弾性スリーブ・ストッキングをうまく利用することを試みましょう。
*炎症(蜂窩織炎)やほかの疾患の場合も、リンパドレナージなどのリンパ浮腫の治療を一生懸命行っても良くなりません。その意味で、リンパ浮腫の治療のもっとも重要なのは「正しい診断」です。正しい診断の下で、「必要最小限の治療」をされることをお勧め致します。
*リンパ浮腫は、多くの場合、腕や脚の付け根付近のリンパ節を切除した場合に発症する左右差のあるむくみです。緩和ケア等でみられる両側性のむくみのほとんどはリンパ浮腫ではありません。
*二次性(術後)リンパ浮腫は腕や脚の付け根から始まります。下肢の場合は陰部にむくみがでることがありますが、初期に対応することが大切です。また、初期に対応すればそれほど心配はありません。
*むくみはその時その時移動しています。圧(重力と弾性着衣)のかけ方ですぐに変わります。はじめは鼠径部にあったむくみも徐々に下の方に落ちていき、いわゆる”脚のむくみ”になります。その意味で、脚全体のむくみとして考えて対応しましょう。逆に”この部位のむくみは取りたい”ということもあります。 (Aug.25,2025)
*炎症(蜂窩織炎)やほかの疾患の場合も、リンパドレナージなどのリンパ浮腫の治療を一生懸命行っても良くなりません。その意味で、リンパ浮腫の治療のもっとも重要なのは「正しい診断」です。正しい診断の下で、「必要最小限の治療」をされることをお勧め致します。
*リンパ浮腫は、多くの場合、腕や脚の付け根付近のリンパ節を切除した場合に発症する左右差のあるむくみです。緩和ケア等でみられる両側性のむくみのほとんどはリンパ浮腫ではありません。
*二次性(術後)リンパ浮腫は腕や脚の付け根から始まります。下肢の場合は陰部にむくみがでることがありますが、初期に対応することが大切です。また、初期に対応すればそれほど心配はありません。
*むくみはその時その時移動しています。圧(重力と弾性着衣)のかけ方ですぐに変わります。はじめは鼠径部にあったむくみも徐々に下の方に落ちていき、いわゆる”脚のむくみ”になります。その意味で、脚全体のむくみとして考えて対応しましょう。逆に”この部位のむくみは取りたい”ということもあります。 (Aug.25,2025)
リンパ浮腫治療の予防について
2008年リンパ浮腫の発症予防に関して「リンパ節郭清の範囲が大きい乳がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がんの手術後にしばしば発症する四肢のリンパ浮腫について、その発症防止のための指導について評価を行う。」 との 決定がなされました。弾性着衣の着用はいったんむくんだ場合のリンパ浮腫においては主体となる治療ですので大変嬉しいことです。
一方で、手術をしたすべての方がリンパ浮腫になるわけではないので、発症予防目的のためのリンパドレナージや弾性スリーブ・ストッキング(または弾性包帯)着用の施行については十分な配慮が必要です。予防目的で安易に弾性スリーブを着用するとかえって手がむくむこともありますし、セルフリンパドレナージを行うのはややもすると、「やらなければむくむ」という強迫観念に近いものが生まれがちです。複合的理学療法はリンパ浮腫が発症した後における対処法です。
つい何か積極的に見える対応を行いたい誘惑にかられますが、リンパ系の特性上、けして劇的効果や完治を期待できるものではありません。無駄のないよう、あくまで、主治医の先生や医療関係者の方ともご相談の上、何が必要かを判断した上で予防さらには治療をされることをお勧めします。(2019.3.17)
一方で、手術をしたすべての方がリンパ浮腫になるわけではないので、発症予防目的のためのリンパドレナージや弾性スリーブ・ストッキング(または弾性包帯)着用の施行については十分な配慮が必要です。予防目的で安易に弾性スリーブを着用するとかえって手がむくむこともありますし、セルフリンパドレナージを行うのはややもすると、「やらなければむくむ」という強迫観念に近いものが生まれがちです。複合的理学療法はリンパ浮腫が発症した後における対処法です。
つい何か積極的に見える対応を行いたい誘惑にかられますが、リンパ系の特性上、けして劇的効果や完治を期待できるものではありません。無駄のないよう、あくまで、主治医の先生や医療関係者の方ともご相談の上、何が必要かを判断した上で予防さらには治療をされることをお勧めします。(2019.3.17)


