余談

私事になりますが、私はリンパの不可思議さに興味を持ち現在の仕事に入るようになりました。動くときは動く、動かないときはほとんど停止している。
 以前、アイソトープを用いてリンパ管の動きを見ていたことがあります。軽く刺激を与えると、始めはまったく動いていないのに、少しずつ、ト―ン、ト―ン、という感じで、ゆっくりゆっくり動き始めます。それがだんだん早くなってきて、トン、トン、トン、トン、という感じになってきます。ひとしきり早くなった後で、また、ト―ン、ト―ンとゆっくりになってきて静かに止まります。ブランコを揺らし始めたらしばらく動いていてだんだん早くなり、MAXまでいったら今度はゆっくり止まり始めるような感じです。(図)この動きはけして機械的なコンスタントなものではありません。大きく息を吸い込んでゆっくり吐き出す事を繰り返すような、ゆったりした動きです。
 この時リンパ管は、始めは「ゼロ」で、最盛期には「無限大」のような動きになります。これは「リンパ管が科学としては扱いにくい」最大の原因であるとも思います。科学では何かを考えるとき、まず「正常値」を知りたがります。しかし、リンパ管は「ゼロ」でもあり、「無限大」でもあるので、説明の仕様がありません。多くの方は、先ほどのブランコの例えで言えば、「リンパ管は1分間に何回振れるのが正常か」を知りたがります。しかし、その答えは止まっているときはゼロで、MAXでは無限大となるので、「0~∞」なのです。それは一般的には答えになっていません。禅問答みたいな受け答えになります。
 リンパというと癌、免疫、などが一般的には知られていて、ここで取り上げたむくみや肥満などとは何の関係もないように見えます。しかし、実は同じ働きの一環なのです。
 むくみを抑えるには?のバスタブでの例えのように、細菌や癌細胞も湯垢の一つなのです。それを排除しようとしてリンパ管は働きます。リンパ管は目立ちませんが、不要物を取り除くことで、生体のバランスを一定に保つために一生懸命働いてる、生体のゴミ処理屋さんです。従って、リンパ管を十分に働かせると、むくみや肥満の予防は勿論、免疫力(体力)も高まる事になります。

 このようなリンパ管の機能は特別な努力をしないと発揮されないのでしょうか。そんなことはありません。むしろ誰にでも備わっているものが、何らかの原因で十分に発揮できない状態に陥ってしまっているのです「本来のきわめてありふれた自然な健康的な生活」がそれにあたるようです。

 リンパの流れをもう一度順序だてて見てみましょう。脚からのリンパは鼠径部のリンパ節に至り、腹部のリンパ管・節を経て、胸管に入り、最終的に鎖骨上窩ので脈に入ります。
 まず、時に横になって休んでは、快活に歩く。これは脚や鼠径部のリンパ節を活発に動かすとともにストレスや疲れを取り去ります。
 その先の胸管を動かすのにはどうしたら良いかというと、これは深呼吸です。それもゆったりとした腹式呼吸をすると、その動きが腹腔の奥のリンパ管や胸管の動きを活発にします。同時に、大きな深呼吸は胸腔内を陰圧として、静脈血を心臓へ吸い込む手助けをします。すなわち、脚のむくみを排除するには、ゆったり大きな腹式呼吸をしながら快活に脚を上げて元気に歩けば良いのです。これは昔から言われている健康法にぴったり合致します。

 また、ストレスがあると顔色が悪くなります。これは血流が悪いことを意味します。血管が収縮して動きも鈍くなっているのです。リンパ管も同様に考えて良いでしょう。ストレスがあっては多くのリンパ流は期待できません。すなわち、いつも気持ちにゆとりをもって、穏やかに幸せを感じながら生活していると良いということになります。

 そして最後に日常生活でのリンパマッサージとは何でしょうか?たとえばお母さんを見つけて飛びついてきた子供を想像してみてください。抱きしめて優しくなでるお母さんの行為はまさにリンパマッサージです。幸せな子供のリンパ管はゆったりと流れます。

 見た目に分かりやすい例は顔のリンパです。顔のリンパは顔を盛んに動かすことによって刺激され流れます。従って、元気良く表情豊かに、快活に、しゃべり、笑い、食べる人はリンパの流れが良いので余計なむくみや脂肪はつきません。一方で、そうでない方はボッテリしたはれぼったい顔になってきます。

 こんな風に考えると、むくみを取る方法はもうお分かりかと思います。
私のようにコンピューターばかり相手にして、ムスッと小難しい顔をしているのではなく、多くの方に会い、語らい、肌のぬくもりを感じ、ホッと安心できる瞬間を作ることが大切なのだろうと思います。そして健康的に楽しく体を動かす時間を作りましょう。それが実はむくみを取る、最も基本となる方法です。

具体的に日常生活ではどうすれば良いか

1)よく歩く ・・・手足のリンパ流の活発化。
2)快活にしゃべり、笑う ・・・顔のリンパ流の活発化。
3)適度な快い刺激 ・・・人に接する。
4)規則正しい生活 ・・・過労、ストレス、体の冷えを避ける。
5)体を鍛える ・・・皮膚の緊張度を高め、皮下組織圧を高める。
   筋肉の静脈ポンプ機能他を高める。
 医療法人社団広田内科クリニック
         
理事長 廣田彰男
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