弾性ストッキングのオーダーメイドと弾性包帯の考え方

1.弾性ストッキング(スリーブ)のオーダーメイド

 リンパ浮腫治療の基本は、脚(腕)のむくみを一旦抜き、細くなった状態を弾性ストッキング(スリーブ)で維持することです。
 しかし、残念ながら理想的な弾性ストッキング(スリーブ)は存在しません。軟らかい人間の皮膚に硬い布地を強く巻きつけるわけですから、どうしてもどこかに無理がかかってしまいます。特に手足を曲げる関節や、弾性ストッキング(スリーブ)の端があたる脚(腕)の付け根などです。
 それなら「脚(腕)に合った形」の弾性ストッキング(スリーブ)が良いのではないかという考えになります。すると、オーダーメイドの弾性ストッキング(スリーブ)が理想的ということなります。
 しかし、もう一度考えてみましょう。脚(腕)は一日立って生活している間に夕方には太くなっています。つまり程度の差こそあれ朝と夜では脚の形は変わっています。すなわち、むくみの液は脚(腕)という袋の中を自由に行ったり来たりしているのです。だったら「いい形」の弾性ストッキング(スリーブ)を着用して、その形に脚(腕)を合わせてしまえば良いのです。従って、むくみが多く、指で押すとペコッと凹むようなむくみがある時期には、オーダーメイドの弾性ストッキング(スリーブ)を作る必要はほとんどありません。むしろ、出来てきた日にはすでに脚(腕)の形やサイズは変わってしまっています。

 たとえば治療を始める際に脚(腕)がとても太くて合うサイズがない場合は作成しても良いかもしれませんが、それでもほとんどの場合、そこまで必要ありません。たとえ脚の膝より下がポパイの力こぶのように大きくなっている場合でも、その形に合わせて弾性ストッキングを作る必要はありません。膝下だけ一時的に弾性包帯などで治療し、太ももとのバランスがとれるようになったら、その形に合う弾性ストッキングを着用すれば良いのです。この期間はそれほど長くはありませんし、そのほうがとても経済的です。理想的ではなくても弾性ストッキング(スリーブ)が市販されており、オーダーメイドより遥かに安価です。初めからオーダーメイドで弾性ストッキング(スリーブ)を作って、小さくなったらまたオーダーメイドで「理想」を追求するとお金がいくらあっても足りません。オーダーメイドは既製品の2~3倍します。

このように考えるとオーダーメイドの適応は、
1:脚(腕)のサイズ自体が大き過ぎて少々細くしても既製品が入りそうにない
2:脚(腕)の長さの問題も含めて、形が弾性ストッキング(スリーブ)が入る形に補正できそうにない
3:かなり細くなって既製品ではそれ以上抑え切れない
4:弾性ストッキング(スリーブ)がカバーしていない部分を補いたい
5:そのような状態が長く続いていて改善の見込みがない場合

と思われます。

それ以外の場合はあえて作る必要はありませんし、特に凹むむくみがたくさんある時期はあえて作らなくても何とか対応していけると思われます。
 弾性ストッキング(スリーブ)のオーダーメイドはかなり高価です。また、上に述べたような理由から、作っても合わないケースが結構多く見られます。安易に、オーダーメイドは高いから良さそうだと思い込んでしまうのは避けたほうが良いと思います。ただし、一旦適切なオーダーメイド(平織り)の弾性ストッキング(スリーブ)ができた場合は、長持ちします。

2.弾性包帯

 上で述べましたとおり、「脚に合った形」の弾性ストッキング(スリーブ)としては、オーダーメイドの弾性ストッキング(スリーブ)が理想的ということなりますが、もうひとつの選択肢として弾性包帯を用いる方法があります。理想的なものがないなら、脚(腕)の形に合わせて一回一回「オーダーメイドの弾性ストッキング(スリーブ)」を作ると良いわけです。すなわち毎日毎日弾性包帯で巻きます。
 まず、皮膚の保護のため肌触りの良いガーゼで脚(腕)を覆います。そして手足を曲げる関節や、布地の切れる脚(腕)の付け根での食い込みなどの問題を避け、弾力によるマッサージ効果を増加させる目的でスポンジなどのクッションで覆い、その上から弾性包帯を巻きます。このようにしますと皮膚を保護し、より強い圧と弾力で脚(腕)を覆うことができます。この意味ではほぼ理想的な「弾性ストッキング(スリーブ)」ということができるでしょう。
 従って、もしできることならこのようにして毎日生活すると良いのですが、いかんせん一人で毎日行うにはかなり大変です。巻き方自体もうまく巻けるようになるにはかなり慣れが必要になります。また、日中はかなりの重装備になりますから生活にも支障があるでしょう。その意味では自宅にいる時だけ、または就寝時だけでも良いかもしれません。逆に言うとそれだけでも効果を期待できます。
 しかし、一般的にそこまでご自分のモチベーションを高めて毎日このような処置をすることができる方はほとんどおられません。私のクリニックでも対応はできるようご指導しておりますが、継続できる方は少ないようです。
 このような意味からも、クッションや弾性包帯を利用したいわゆる「バンデージ法」というのは一般的には実際的ではありません。履くのが大変でも、一応「履くだけ」の弾性ストッキング(スリーブ)の方が便利です。ですが、弾性ストッキング(スリーブ)には理想的な「脚に合った形」のものはありませんから、もう一息脚(腕)を良くしたい場合には、この「バンデージ法」は大変効果的な方法です。オーダーメイドも含めて、弾性ストッキング(スリーブ)のみではもうひとつ満足できる状態にできず、ご自分で頑張れると思いましたら、なさるとそれだけの効果はあります。
 医療法人社団広田内科クリニック
         
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